「仕事始め」と「仕事初め」、どちらが適正な言葉かなのでしょうか?
「その理由は何か?」「なぜ誤って利用されるのか?」「御用納めとはどう違うのか?」これらの疑念を払拭します!
また、「始め」と「初め」の適切な区別とその背後の理念、研究により判明した使い間違いの頻度、御用納めに関する説明も合わせて、分かりやすく解説いたします。
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「仕事始め」と「仕事初め」、どちらが適正なのか?
新年がスタートし、初の出勤日や年初に行われる業務を「仕事はじめ」と称します。
ですが、「仕事始め」と「仕事初め」、どちらの表記が適切なのでしょう。
そこで、結論から述べますと「仕事始め」が正しい書き方となります。
ちなみに『広辞苑』の定義によれば、
しごと-はじめ【仕事始め】
新年が訪れ、初めて仕事を行うこと。多くの地域では正月2日がその日となり、現代の企業や商業施設では正月4日が一般的となっている。関連語として「事始め」「仕始め」もある。
広辞苑より
となっています。
「仕事始め」の「始め」は、英語に置き換えると「start」となります。
その為、新年を迎えて仕事を開始することから、「仕事始め」となります。
一方で、「初め」は英語で「first」に該当します。これは順序の最初や時間的な初めを指すもので、「最初」のニュアンスが強いです。
例えば、新年に初めて行われる筆記を「書き初め」と言います。こちらの「初め」は「初めて」という意味合いが強いです。
したがって、「仕事始め」は仕事をスタートする日を指し、必ずしも初めての仕事を意味するものではありません。
このため、新年における仕事の開始を示す言葉としては、「仕事始め」が適切です。特にビジネスの文脈での使用時には、正確な用語を使用しないと相手を混乱させる可能性がありますので、注意が必要です。
「仕事初め」と「仕事始め」、どちらが適切なのか?
ビジネスメールのやり取りの際に、よく「仕事初めは1月4日から」という表現を見かけることがあります。
以前、あるSNSでは「仕事始め」と「仕事初め」の使用頻度についての調査が行われていましたが、その結果、
「仕事始め」を使用している人: 77%
「仕事初め」を使用している人: 23%
と、約4人中1人が「仕事初め」を用いていることが分かりました。
では、なぜ正しくないとされる「仕事初め」を多くの人が使用するのでしょうか?
これには、PCやスマートフォンの「変換」機能が関与している可能性が高いと思われます。
実際、主に使用しているデバイスでは「仕事始め」が自動的に表示されるが、共用のPCなどでは、「仕事始め」と「仕事初め」が変換候補として提示されることがあります。
更に、他のデバイスで試すと、
1. 仕事始め
2. 仕事はじめ
3. 仕事初め
の順に変換候補が出てくる事もありました。
こうした候補が提示されることで、人々は誤った言葉を選んでしまうのかもしれません。
また新年を迎えると、「初日の出」や「初夢」といった「初」という漢字を頻繁に目にします。これが「仕事初め」という言葉を使いたくなる背景にも影響しているのかもしれません。
ですが、肝心なのは、「仕事始め」が正確な表現であり、それは仕事を再開する日、またはスタートさせる日を意味するという点を理解しておく必要があります。
「御用始め」と「仕事始め」、その違いとは?
年末年始になると「御用納め」「御用始め」といった表現や、「仕事納め」「仕事始め」という言葉を聞くことが多いですが、これらの言葉は基本的に同じ意味を持つとされています。
「仕事納め」と「御用納め」は、年の終わりに業務を終える日を指します。
一方、「仕事始め」と「御用始め」は、新しい年に業務をスタートする日を示しています。
「御用」という部分には、「公務」というニュアンスがあります。かつて時代劇などで「御用だ!」という表現を耳にしたことがある人も多いでしょう。
これは、公的な権限を持つ者が命じた業務や命令を意味します。この言葉は、かつて宮中や幕府の公務を指す言葉として使用されており、現在でも公的機関では「御用納め」が用いられることがあります。
「御用始め」が使われ始めた時期
「御用始め」という言葉は、1873年に公務員の休日に関する法令が施行された際に生まれたとされています。一般の企業でも「御用納め・御用始め」は1960年代まで頻繁に使用されていました。
しかしながら、この言葉が持つ「公務を行う者=権威のある人」という古風なニュアンスや、堅い印象から、「仕事納め・仕事始め」という表現が主流となりました。NHKは基本的に「仕事納め・仕事始め」の表現を採用し、多くの官公庁もこの言葉を優先して使用していると言われています。
とはいえ、一部の人の中には「御用納め・御用始め」と言う人もいるので、一般的に使われなくなったとはいえ、完全に消えた訳ではありません。さらに、証券取引所においては、「仕事納め」「仕事始め」を表す時に「大納会」「大発会」という言葉が使用されます。
まとめ
最後にまとめますと、「仕事始め」が正式な表現で、「仕事初め」は誤った使い方とされています。
考え方としては、「仕事始め」の「始め」は英語でいうところの「start」に相当します。新年が始まった際に業務を開始する意味で「仕事を開始する」、すなわち「仕事始め」となっています。
この表現に似ている「御用始め」という言葉も存在しますが、基本的には「仕事納め・仕事始め」と「御用納め・御用始め」は同じ内容を指します。しかし、現在でも「仕事初め」と表記する人が4分の1近くいると言われています。
言葉の使用は時代と共に進化するので、「仕事初め」がいずれ標準的な表記になる可能性も否定はできません。
しかしながら、現段階での正確な使い方は「仕事始め」ですので、ビジネスの文書や挨拶の際には正しい用語を使用するよう注意が必要です。