子供の頃、ヤモリを見かけた際に興味本位で捕まえようとして、尻尾を切られて逃げられたなんて経験をした事があるという方も居るかと思われます。
ヤモリには切られた尻尾を再生するという能力が備わっている一方で、必ずしもそれが万能であるとは言えません。
なので、面白半分に尻尾を切ってしまうと、うまく再生できない可能性も無きにしも非ずなのです。
この記事では、ヤモリの尻尾切りに関する事についてまとめました。
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【ヤモリの後部】放棄したら、再び育つの?
ヤモリは尾部分を自ら切り捨てる能力があります。
ヤモリは敵に襲われる際、自らの足や尾を切り捨てて、身を隠す為の手段をとることがあります。これのことを「自切」と言います。
自切と聞くと、「自ら尾を切り捨てる」というイメージを持ちがちですが、実際にはヤモリが意図して行う行動ではなく、敵からの攻撃を受けた反応として自動的に行われるものです。
そして、放棄されたヤモリの尾は、時間が経つと再び育つことが知られています。
尾部の回復に必要な時間
回復するまでの時間は、おおよそ数週間から数ヶ月を要することが多いです。
ただし、数ヶ月の間に回復は進みますが、元の尾の骨まで完璧に戻るわけではなく、初めの完全な形には戻りませんし、外観も微妙に異なります。
その為、新しく生えた尾は色合いが淡く、やや太く短い形状をしています。
また、新たに生えた尾がもし切れてしまっても、再び生えることが期待されます。ですが、適切な栄養が必要とされるため、いくつかのケースでは、新しく生えないヤモリもいるかもしれません。
特に注意すべきは、わざと工具などで人為的にヤモリの尾を切り取ると、回復しないケースもあるので、そういった行為は避けるべきです。
ヤモリの尾には、切れても問題ない箇所とそうでない箇所が存在するのかもしれませんね。生命の神秘を感じさせられます。
何度も自切することはできない
尾が何度も再生し、何回も放棄できると考えている人もいますが、その考えは正確ではありません。基本的には、2回目の自切は困難なものとなっています。
これはヤモリの尾の構造に関係しています。
ヤモリの尾は、たくさんの細かい骨で構成されています。
尾の特定の部分、脱離部と呼ばれる場所で断裂し、骨も一緒に失われてしまいます。その為、新しく成長した骨にはこの脱離部は存在しないのです。
したがって、ヤモリが尾を放棄することは一生で1回だけとなります。
ただし、もし残された尾部に脱離部が存在していれば、もう1度放棄することが可能ですが、その確率は低いと言われています。
ヤモリの新しい尻尾は短くなる
ヤモリの失われた尻尾は再生しますが、元の骨構造を完璧に再現することは難しく、結果として短い尻尾として生まれ変わります。
元々の尻尾には、尾骨という頑丈な骨が含まれていますが、一度尻尾が切れると、この尾骨も損傷します。
理想的には、この尾骨が再生すれば以前の形に戻ることができるのでしょうが、実際には完全に同じ骨を再生するのは難しく、代わりに軟骨で新しい尻尾が形成されます。
この結果、再生された尻尾は以前のものよりも太く、短く、不均一な形状を持つことになります。
頑丈な尾骨がもともとの基盤として存在しないため、新しく生えた尻尾は短くなるのです。
軟骨の性質上、長くなるとしっかりと支えられず、ぶら下がるような状態になるため、結果として短い尻尾が形成されます。
ヤモリの尻尾を切った時、血は流れるのか?
ヤモリが尻尾を自切する場合、実はほとんど血は流れません。
なぜ血が出ないのかというと、尻尾の特定の部分が予め切れやすくなっており、それに伴い、筋肉が瞬時に収縮することで出血を最小限に抑えているからです。
もし血を見かけたとしても、それは尻尾の自切によるものではなく、外からの攻撃によって傷つけられた結果である可能性が高いです。
尻尾の筋肉が速やかに収縮し、加えて自切した部位の血管の内壁が血液の流れを止める作用を果たすので、大量の出血は抑える事が出来ます。
しかし、無分別にハサミなどで尻尾を切ると、このような自然な反応は期待できないため、無駄にヤモリの尻尾を切断するのは避けるよう注意しましょう。
トカゲやイモリのように、尻尾を再生する生物は他にもいるのでしょうか?
トカゲやイモリも、尻尾の再生能力を持っています。
ちなみに、ヤモリとイモリ、似たような名前で、混同しやすいですよね?
注視して見ない限り、混同してしまうのも無理はないと思います。
名前が似ているとはいえ、ヤモリとトカゲは「爬虫類」、一方でイモリは「両生類」として知られています。そして、これらの分類に応じて、尻尾の再生メカニズムも異なることが指摘されています。
トカゲの自切の特性
「トカゲの尻尾切り」という言葉からも分かるように、トカゲはヤモリと同じく自ら尻尾を切り落とすことが知られています。しかしながら、すべてのトカゲがこの特性を持っているわけではないのです。
いくつかの種類は尻尾を切らず、また、一部のトカゲは尻尾が切れても再生しません。日本で一般的なニホントカゲのように、尻尾が再生するトカゲは、骨は戻らず軟骨で新しい尻尾が形成されるため、かつての姿に完全には戻りません。
イモリの驚異的な再生能力
イモリは、ヤモリやトカゲと異なり、両生類として知られており、自らは尻尾を切ることはありません。しかし、もし失ってしまった場合でも、骨を含む完全な形で尻尾を再生します。
さらに、この驚異的な再生能力は、他の体の部位や組織、例えば網膜や脊髄、脳の一部にも及びます。この再生能力はヤモリやトカゲとは比較にならないほど優れています。
リュウグウノツカイの特性
海洋生物の中には、リュウグウノツカイが尻尾を切ることで知られています。敵に追われる際、尻尾を切るのは他の生物と同じ生存戦略を持っています。
しかしそれだけではなく、もう1つの理由が存在します。
それは、エネルギーの節約のためです。
厳しい深海の生活環境下で、食糧が足りなくなることもあるため、エネルギーの使用を極力抑える目的で尻尾を切ることがあるのです。
ヤモリが尻尾をなぜ自切するのか
ヤモリが主に尻尾を放棄する最大の目的は、自己防衛です。
捕食者に追われる際や危機感を感じたとき、自然に反射的に尻尾を切り離します。
この瞬時の行動の背景には、脊椎の特定の部分が自切しやすいようにデザインされているからです。そして、自切された尻尾はおおよそ10~30分間、様々な動きをすることが知られています。
この動きは予測が難しく、時には飛び跳ねたりするため、捕食者はこれに気を取られ、ヤモリは逃走するチャンスを手に入れます。
この仕組みは、自切した尻尾が捕食者を引き付け、ヤモリ本体が安全に逃げることを可能にするという巧妙な仕組みです。
いくつかの体験談として、子供の頃にヤモリを尾でつかんだことがある人は、軽く持ったにも関わらず、その尻尾が切れて本体が逃げるのを目撃したかもしれません。つまり、放棄された尻尾が分散の役割を果たしていたのです。
さらに興味深いことに、ヤモリは逃げた後、自切した尻尾の場所に戻り、それを摂取することがあると言われています。これは、尻尾に含まれる栄養を取り戻すための行動であり、尻尾の再生にも役立っていると考えられます。
【まとめ】ヤモリの尻尾切りは一度限り!
ヤモリの尻尾の自切に関してまとめさせてもらいました。
尻尾が何度も再生し、何度でも放棄できると考えている人もいますが、実際のところは異なります。
さらに、再生された尻尾は元の長さよりも短く、形も完璧ではありません。ヤモリの生存は決して容易ではありません。
もし、ヤモリを自宅で見かけて外に遣わす場合は、優しく手をかけて放してあげましょうね。